会社の定款に「問題社員」への対応を盛り込むことはできる?弁護士に聞く、企業防衛と社員の権利
会社の定款に「問題社員」への対応を盛り込むことはできる?弁護士に聞く、企業防衛と社員の権利
この記事では、会社の定款に「会社の尊厳を著しく傷つけたものや損害を与えたものは、社員または役員から除名する」「反社会勢力に属しているものは、社員または役員になることができない」といった条文を盛り込むことの可否について、具体的なケーススタディを通じて解説します。企業が社員の行動を管理し、リスクを回避するための法的枠組みについて、弁護士の見解を交えながら、わかりやすく解説します。企業のコンプライアンス体制強化や、社員との良好な関係構築を目指す経営者、人事担当者、そして働くすべての人々にとって、役立つ情報を提供します。
株式会社の定款には、「会社の尊厳を著しく傷つけたものや損害を与えたものは、社員または役員から除名する」「反社会勢力に属しているものは、社員または役員になることができない」のような条文を入れることはできないのでしょうか?
株式会社の定款に、社員や役員の行動を制限し、企業を守るための条項を盛り込むことは、多くの企業にとって重要な関心事です。特に、近年のコンプライアンス意識の高まりや、企業を取り巻くリスクの多様化に伴い、定款の役割はますます重要になっています。しかし、定款にどのような条項を盛り込めるのか、どこまで踏み込むことができるのかは、法律の専門知識が必要となる部分です。この記事では、定款に盛り込める条項の法的根拠、具体的な記載例、注意点などを、弁護士の見解を交えながら解説します。
1. 定款とは何か?その役割と重要性
定款とは、株式会社の基本的なルールを定めたもので、会社の憲法とも言える重要な書類です。会社の組織、運営、活動に関する基本的な事項が記載されており、株主、役員、従業員など、会社に関わるすべての人が遵守すべきルールを示しています。定款は、会社設立時に必ず作成し、法務局に提出する必要があります。定款の内容は、会社の規模や事業内容、経営方針などによって異なり、会社の成長に合わせて変更することも可能です。
定款の役割は多岐にわたりますが、主なものとして以下が挙げられます。
- 会社の組織と運営の基本ルールを定める: 役員の選任方法、株主総会の開催方法、事業年度など、会社の運営に関する基本的な事項を定めます。
- 株主の権利と義務を明確にする: 株主の議決権、配当に関する権利など、株主の権利と義務を定めます。
- 会社の事業目的を定める: 会社がどのような事業を行うのかを明確にし、事業活動の範囲を定めます。
- 紛争の予防と解決: 株主間や会社と役員間の紛争を未然に防ぎ、万が一紛争が発生した場合の解決策を定めます。
- 企業のコンプライアンス体制を強化する: 会社の社会的責任を果たすために、法令遵守に関する規定を盛り込むことができます。
定款は、会社の運営を円滑に進め、株主や関係者の権利を守るために不可欠なものです。また、企業の信頼性を高め、社会からの評価を得るためにも重要な役割を果たします。
2. 定款に盛り込める条項の法的根拠
定款にどのような条項を盛り込むことができるのかは、会社法によって定められています。会社法は、定款に記載できる事項を「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つに分類しています。
- 絶対的記載事項: 必ず定款に記載しなければならない事項です。具体的には、会社の目的、商号、本店の所在地、設立時の出資額などがあります。
- 相対的記載事項: 記載することで効力が発生する事項です。例えば、取締役の任期を短縮する場合などがあります。
- 任意的記載事項: 記載するかどうかは会社の自由ですが、記載することで会社運営の柔軟性を高めたり、リスクを軽減したりすることができます。今回のテーマである「社員の除名」に関する規定は、この任意的記載事項に該当する可能性があります。
会社法は、定款に記載できる事項について、ある程度の自由度を認めています。ただし、公序良俗に反する内容や、法律に違反する内容は、定款に盛り込むことはできません。定款を作成する際には、会社法の規定を遵守し、弁護士などの専門家の意見を聞きながら、適切な内容を検討することが重要です。
3. 「問題社員」や「反社会勢力」への対応を定款に盛り込むことの可否
定款に「会社の尊厳を著しく傷つけたものや損害を与えたものは、社員または役員から除名する」「反社会勢力に属しているものは、社員または役員になることができない」といった条項を盛り込むことは、法的に可能なのでしょうか?
結論から言うと、これらの条項を定款に盛り込むことは、一定の条件を満たせば可能です。ただし、無制限に認められるわけではなく、いくつかの注意点があります。
まず、「会社の尊厳を著しく傷つけたものや損害を与えたもの」という条項についてですが、この表現は抽象的であり、解釈の余地が大きいため、具体的にどのような行為が該当するのかを明確に定義する必要があります。例えば、「業務上横領を行った場合」「会社の機密情報を漏洩した場合」「顧客や取引先に対して不当な行為を行った場合」など、具体的な事例を列挙することで、条項の解釈を明確にすることができます。
次に、「反社会勢力に属しているもの」という条項についてですが、これも定義が重要です。反社会勢力とは、暴力団、暴力団員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団など、暴力や威力を用いて経済的利益を追求する集団または個人を指します。この定義を明確にした上で、反社会勢力との関係が判明した場合に、社員や役員を除名できる旨を定款に盛り込むことができます。
これらの条項を定款に盛り込む際には、以下の点に注意する必要があります。
- 客観的な基準: どのような行為が「会社の尊厳を著しく傷つけた」ことになるのか、客観的な基準を設ける必要があります。主観的な判断だけで除名することは、不当解雇とみなされる可能性があります。
- 十分な証拠: 除名を行うためには、十分な証拠が必要です。証拠がないまま除名を行った場合、不当解雇として訴訟を起こされる可能性があります。
- 手続きの明確化: 除名の手続きを明確に定める必要があります。例えば、対象者への弁明の機会を与える、取締役会の決議を経るなど、公正な手続きを定款に規定する必要があります。
- 労働法規との整合性: 労働基準法や労働契約法などの労働法規に違反するような内容は、定款に盛り込むことはできません。弁護士などの専門家に相談し、労働法規との整合性を確認する必要があります。
これらの注意点を踏まえ、定款に適切な条項を盛り込むことで、企業は問題社員や反社会勢力からのリスクを軽減し、企業防衛を強化することができます。
4. 定款への具体的な記載例と注意点
以下に、定款に「問題社員」や「反社会勢力」への対応を盛り込む場合の具体的な記載例と、その際の注意点を示します。
記載例1: 会社の尊厳を著しく傷つける行為に対する条項
第〇条(社員の除名)
- 社員が以下の各号のいずれかに該当する場合、取締役会の決議により、当該社員を除名することができる。
- 業務上横領を行った場合
- 会社の機密情報を漏洩した場合
- 顧客や取引先に対して不当な行為を行った場合
- その他、会社の社会的信用を著しく毀損する行為を行った場合
- 前項に基づき社員を除名する場合には、当該社員に対し、事前に弁明の機会を与えなければならない。
- 除名された社員は、会社に対し、損害賠償を請求することができない。ただし、会社の故意または重過失による場合はこの限りではない。
注意点:
- 「会社の社会的信用を著しく毀損する行為」という抽象的な表現は、具体例を列挙するなどして、解釈の余地を狭める工夫が必要です。
- 除名の手続きとして、弁明の機会を与えることを明記し、公正性を確保する必要があります。
- 損害賠償に関する規定は、労働法規との整合性を確認する必要があります。
記載例2: 反社会勢力との関係遮断に関する条項
第〇条(反社会勢力との関係遮断)
- 社員または役員が、暴力団、暴力団員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団など、暴力や威力を用いて経済的利益を追求する集団または個人(以下「反社会勢力」という)に該当すると判明した場合、取締役会の決議により、当該社員または役員を除名することができる。
- 社員または役員が、反社会勢力と密接な関係を有することが判明した場合も、前項と同様とする。
- 前項に基づき社員または役員を除名する場合には、当該社員または役員に対し、事前に弁明の機会を与えなければならない。
注意点:
- 反社会勢力の定義を明確にし、誤解を招かないようにする必要があります。
- 反社会勢力との「密接な関係」についても、具体的にどのような関係が該当するのかを定義する必要があります。
- 除名の手続きとして、弁明の機会を与えることを明記し、公正性を確保する必要があります。
これらの記載例はあくまでも例示であり、個々の会社の状況に合わせて、適切な内容を検討する必要があります。弁護士などの専門家に相談し、自社の状況に合った定款を作成することが重要です。
5. 定款変更の手続き
定款を変更するには、株主総会の特別決議が必要です。特別決議とは、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を得ることをいいます。定款変更の手続きは、以下の通りです。
- 取締役会での決議: 定款変更案を取締役会で決議します。
- 株主への通知: 株主総会の開催を決定し、株主に対して招集通知を送付します。招集通知には、定款変更案の内容を記載します。
- 株主総会の開催: 株主総会を開催し、定款変更案について審議・決議を行います。
- 登記: 株主総会で定款変更が承認された場合、変更後の定款を法務局に提出し、登記を行います。
定款変更の手続きは、会社法で厳格に定められています。手続きに不備があると、定款変更が無効になる可能性があります。定款変更を行う際には、弁護士などの専門家に相談し、適切な手続きを行うことが重要です。
6. 企業防衛と社員の権利保護の両立
定款に「問題社員」や「反社会勢力」への対応を盛り込むことは、企業防衛のために有効な手段ですが、同時に社員の権利を尊重することも重要です。企業は、社員の権利を侵害することなく、適切な方法でリスクを管理する必要があります。
具体的には、以下の点に注意する必要があります。
- 透明性の確保: 定款の内容を社員に周知し、理解を求めることが重要です。
- 公正な手続き: 除名や懲戒処分を行う際には、公正な手続きを踏む必要があります。
- 弁明の機会の付与: 対象者には、弁明の機会を与え、言い分を聞く必要があります。
- 専門家との連携: 弁護士や社会保険労務士などの専門家と連携し、法的なアドバイスを受けることが重要です。
企業防衛と社員の権利保護は、対立するものではなく、両立することができます。企業は、法令を遵守し、社員の権利を尊重しながら、リスク管理を行うことが求められます。
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7. まとめ
この記事では、会社の定款に「問題社員」や「反社会勢力」への対応を盛り込むことの可否について解説しました。定款は、会社の運営を円滑に進め、企業を守るために重要な役割を果たします。定款に適切な条項を盛り込むことで、企業はリスクを軽減し、コンプライアンス体制を強化することができます。しかし、定款に盛り込む条項は、法律の専門知識が必要となる部分であり、安易に記載することはリスクを伴います。弁護士などの専門家に相談し、自社の状況に合った定款を作成することが重要です。また、企業防衛と社員の権利保護を両立させるために、透明性の確保、公正な手続き、弁明の機会の付与など、様々な工夫が必要です。今回の記事が、企業のコンプライアンス体制強化や、社員との良好な関係構築の一助となれば幸いです。
定款に関する疑問や、企業法務に関するご相談は、専門家である弁護士にご相談ください。
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